看護師の有給休暇取得率を高めるには? 医療機関が行うべき環境整備と定着支援策

  • 医療従事者の採用・定着ノウハウ
  • 2025年10月17日

看護師の有給休暇取得率は他職種と比較して依然として低く、職場環境の課題が浮き彫りとなっています。医療機関が人材の定着と採用力を高めるためには、「有給休暇を取得しやすい職場づくり」が重要な要素です。本記事では、看護師の有給休暇に関する現状と課題、取得促進のための体制づくり、管理職の意識改革、勤務シフト改善、さらに定着支援施策の実例までを解説します。

1.看護師の有給休暇取得率の現状と課題

厚生労働省の調査によると、医療・福祉分野の有給休暇取得率は全産業平均を下回る水準にとどまっています。
特に看護師の場合、患者対応業務や夜勤体制による人員不足が背景にあり、休暇取得が難しい状況が続いています。
この状況は、長時間労働やメンタルヘルス不調、離職率の上昇といった問題にもつながっており、結果的に採用コストの増大や人材確保の難化を引き起こしています。

看護師の有給休暇取得を促進することは、「職員が安心して働ける職場環境づくり」と「採用競争力の向上」の両面で、医療機関にとって重要な経営課題といえるでしょう。

2.有給休暇取得を妨げる要因とは

看護師が有給休暇を取りづらい理由は多岐にわたります。主な要因として以下が挙げられます。

  • ・人員配置の不足:慢性的な人手不足により、休暇取得時の代替要員が確保できない。
  • ・管理者の意識不足:有給取得を「特別なこと」と捉える風土が残っている。
  • ・シフト制の複雑さ:勤務体制が複雑で、調整コストが高い。
  • ・同僚間の遠慮:チームワークを重視する文化が、かえって休暇申請の抑制につながる。

これらの課題を放置すると、職員の満足度やエンゲージメントが低下し、採用面でも不利に働きます。

3.医療機関が実施すべき「取得促進」の具体策

有給休暇取得率を改善するためには、制度整備だけでなく「取得を促す仕組み」が欠かせません。具体的な取り組みとして、以下のような施策が有効です。

  • ・シフト管理のデジタル化:勤務調整システムを導入し、取得希望を見える化。
  • ・業務分担の再設計:休暇者が出ても業務が滞らないよう、タスクの標準化を行う。
  • ・有給休暇計画付与制度の導入:病棟単位で年間取得計画を策定し、組織的に消化を促進。
  • ・管理職研修:有給取得の必要性と職員満足度への影響を理解させる。

こうした取り組みを継続的に行うことで、「有給が取りやすい職場」という信頼を築くことができます。

4.職員定着と採用に与えるプラス効果

有給休暇を積極的に取得できる職場は、看護師からの信頼と満足度が高まり、結果的に離職率の低下につながります。
また、採用面でも「働きやすさ」を訴求できるため、求人への応募数増加にもつながります。

看護師の採用市場では、給与条件よりも「ワークライフバランス」や「職場の柔軟性」を重視する傾向が強まっており、有給休暇取得率の高さは医療機関のブランド価値を高める重要な指標となっています。
(参考:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」)

5.今後の展望と定着支援の方向性

今後は、単に「取得率を上げる」ことにとどまらず、休暇中も安心して業務を任せられるチーム体制の構築が求められます。 そのためには、スタッフ間の相互支援文化を育てるとともに、ICTの活用や派遣・紹介人材の有効利用も重要です。 人員を柔軟に補完できる体制を整えることで、有給休暇の取得促進とともに、長期的な職員定着にもつながります。 「休める職場」を実現することが、これからの医療機関経営の持続性を支える鍵となるでしょう。

まとめ

看護師の有給休暇取得率向上は、採用力と職員定着率の向上に直結する重要課題です。
人員不足や管理者意識の課題を克服するためには、シフト管理のデジタル化や業務分担の見直し、管理職研修など、組織全体での取り組みが不可欠です。
「休みやすい職場づくり」が、これからの医療機関の信頼性と競争力を高めます。

一覧へ戻る

Contact Us