医療職が“選びたくなる職場”の条件──職員満足度を高めるための5つの要素

  • 医療職が満足する職場とは?
  • 2025年7月14日

医療従事者の人材確保が困難を極める中、求職者から「選ばれる医療機関」になるためには、職員満足度の向上が重要である。
本記事では、医療職のエンゲージメントを高めるための福利厚生制度、働きやすさの整備、評価と報酬の透明性、ストレスマネジメントなど、現場で実践できる5つの改善策を紹介。求人募集への応募率を高めるために、医療機関が取り組むべき“内部からのブランディング”の具体策を解説する。

医療従事者が選ぶ時代の採用戦略

医療機関において、優秀な医療従事者の確保が難しくなっている背景には、採用市場の競争激化だけでなく、求職者側の“選ぶ力”が強まっている現状があります。
かつては「安定しているから」「通勤に便利だから」といった理由で応募されることが多かった医療機関も、今では「どんな職場環境か」「人間関係は良好か」「成長できるのか」といった内面的な要素で選ばれるようになっています。

日本医療労働組合連合会の調査(2023年)によれば、20〜40代の医療職志望者のうち、実に65%以上が「人間関係の良さ」「働きやすさ」を就職先選びの最重要項目に挙げています(※出典:医労連 調査レポート)。
このような流れの中で、医療機関が“選ばれる存在”になるためには、職員満足度を高めるための取り組みを具体的に行い、それを外部に正しく発信していくことが不可欠です。

職員満足度の構成要素とは

医療従事者が「この職場で働き続けたい」と思う背景には、給与や福利厚生だけではなく、さまざまな要素が関係しています。
とくに重要なのは次の5つです。

  • ・公平で納得感のある評価制度がある
  • ・自分の意見を言いやすく、相談できる人がいる
  • ・成長を実感できる仕組みがある
  • ・働き方に柔軟性があり、ライフステージに応じて変化に対応できる
  • ・自分の仕事が組織に貢献しているという実感がある


とくに、放射線技師や検査技師などの技師職においては、「誰からも感謝されない」「成果が見えづらい」といった環境下にあることが多く、日々の業務にやりがいを感じづらい傾向があります。
このような職種こそ、評価や感謝を可視化する制度設計が必要です。
たとえば、上司との定期面談や自己評価シートの活用、サンクスカードの導入など、小さな工夫が職員の心理的充足感を大きく高めることがあります。

福利厚生・評価制度・ストレスマネジメントの整備

働きやすい職場を実現するには、目に見える制度設計が欠かせません。特に効果的な取り組みとして、以下のような制度が挙げられます。

  • ■ 福利厚生
  • ・院内保育所や保育手当の支給
  • ・繁忙期を避けて取得できるリフレッシュ休暇制度
  • ・引越し・通勤距離の負担を軽減する住宅手当の整備
  • ・認定資格や研修費用の補助(最大5万円/年など)


  • ■ 評価制度
  • ・技師ごとの定量KPI(検査数・ミス率・対応件数など)の導入
  • ・年2回の上司とのキャリア面談による個別フィードバック
  • ・昇格条件の可視化と事前提示
  • ・看護部・技師部・事務職など、部門横断の評価委員会による公平性担保


  • ■ ストレスマネジメント
  • ・月1回の職場満足度アンケート(匿名方式)
  • ・外部カウンセラーとの契約によるEAP(従業員支援プログラム)導入
  • ・感謝を伝える社内表彰制度(年1回)
  • ・残業上限の明文化と、残業ゼロデーの設定


制度を整えるだけでなく、「実際に使える」「相談できる」「改善される」という体感が伴うことで、制度は初めて“生きたもの”になります。 導入して終わりではなく、継続的なアップデートが必要です。

職員満足を“外に伝える”ブランディングの時代

せっかく良い制度や文化があっても、それを外部に伝えなければ、求職者には存在を知ってもらえません。
今の採用は、「待つ採用」から「見せる採用」へと変化しています。
以下は、職場の良さを求職者に伝えるために効果的な施策です。

  • ・採用サイトで職員の声を掲載し、1日の仕事の流れを紹介
  • ・YouTubeやInstagramで、働く様子を動画・画像で発信
  • ・noteやブログで、スタッフのリアルな仕事観や成長体験を連載
  • ・地元紙・業界誌などの外部メディアと連携して職場紹介記事を展開


たとえば、ある病院では「職員インタビュー動画×採用LP」の組み合わせにより、1年で応募者数が3.2倍に増加しました。
特に若年層の技師・看護師・医療事務などにおいては、SNSでの第一印象がそのまま応募意思決定に直結することが多いため、発信の質と量は非常に重要です。

満足度を“しくみ”で継続し、紹介・定着へとつなげる

満足度向上の施策は一度導入して終わりではなく、「継続できるしくみ」として制度化することが求められます。
たとえば、次のような流れが理想です。

  • ・年1回の職員満足度調査→改善計画の策定
  • ・制度改善チーム(労務+現場+人事)による実行管理
  • ・定着率・離職率・紹介率のモニタリング
  • ・各職種の評価・処遇見直しと業務設計の見直し


このように、組織としてPDCAを回し続けることによって、制度が現場で“自然に機能する状態”になります。
さらに、職員が本音で「うちの病院は働きやすい」と言えるようになれば、紹介採用や口コミによる入職が自然と増えます。
まさに「満足度が最大の採用力」となるのです。

まとめ

医療従事者から“選ばれる病院”になるためには、待遇だけでなく、働きやすさ・人間関係・評価制度といった満足度の源泉を整えることが重要です。
本記事では、福利厚生の工夫やストレス対策、採用ブランディングの具体例まで含め、持続可能な人材確保のための環境整備を解説します。

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